世界的に動画マーケティングが成長しており、昨今5Gの普及によりさらに加速すると言われています。特にYouTubeなどの動画配信プラットフォームは人気が高く、日本でも、10~20代では「YouTubeを見る」割合がテレビ(地上波・BS・CS)を見る」割合を上回っているというデータもあります(※1)。
YouTubeのマーケティング活用に関して、フランスでは独自のバロメータを使用し、フランスのYoutubeチャンネル700アカウントを対象に四半期ごとのYouTube活用企業のランキングを発表しています。ここでは2021年第3四半期のベスト10をご紹介していきます。
※記事内の記載(数値等)はランキング発表時点の情報に基づきます。
(※1)出典:https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1993.html
フランス2021年第3四半期「YouTube活用企業」ベスト10 |
2021年第3四半期に獲得した全体のチャンネル登録者数は83.5万に達し、昨年同期の27%増となっています。前例のないこの記録から、フランスでは今、企業がYouTube上での動画施策にどれほど注力しているかがうかがえます。
1位:Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン) |
1位のルイ・ヴィトンは、この期間中に31.3万ものチャンネル登録者を獲得しています。
2021年7月の1カ月間で、累計91.1万人のチャンネル登録者数の3分の1以上を獲得しています。
そのきっかけは韓国から今や世界的アーティストとなったBTSを起用した、ソウルでの2021秋冬メンズファッションショーのライブ配信だと考えられます。5000万回以上再生されました。
人気絶頂のBTSを起用したリアルタイムのライブ配信ということで、多くのライブ視聴者数とともに、その後のアーカイブの視聴者数も伸びる結果となりました。
動画自体も、現代アートを取り入れた斬新な映像でありながらも、オーディエンスとの距離感を大事にしていることが、より多くのユーザーへのアプローチを可能にしたのでしょう。
YouTubeというグローバルなプラットフォームを利用して爆発的な成功を収めた良い例です。
また、その後もバックステージ動画などを続けてアップすることにより、視聴者をチャンネル登録するまで囲いこむことに成功しています。
<ルイ・ヴィトン:2021秋冬メンズファッションショー>
2位:Parrot(パロット) |
2位にランクインしたのは、ドローンなどハイテク製品専門のメーカーParrot(パロット)です。専門的な商材でありながらも、ルイ・ヴィトンに近いエンゲージメント率を獲得しています。
33万回再生されている新商品のローンチビデオでは、エリック・サティの落ち着いた音楽に乗せて、ハチドリのように飛ぶドローンを美しい映像で描きながら、その機能や性能まで表現しています。
同チャンネルでは、その他にも、「信頼性のあるドローン」というコンセプトで、1~2分前後の短い動画(10秒台のものも多い)をコンスタントにアップしています。中でも、具体的な使用シーンや、同社の製品によって撮影された美しい映像などが多く再生されています。
<パロット:ローンチビデオ>
3位:Brico Depot(ブリコ・デポ)
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日曜大工・DIY専門企業のBrico Depot(ブリコ・デポ)は、ゲーム感覚で楽しめる動画がトレンドに乗り、3位にランクインしました。
YoutubeのDIY専門家8人が集結した初のDIYコンテスト企画であるオリジナルコンテンツシリーズ「Brico Warriors」では、DIY好きのユーザーを巻き込み、高いエンゲージメント率を獲得。期間中の登録者数は20%も増加しています。
DIY業界全体を盛り上げるコンテンツを発信することにより、ファンを取り込むことができた事例です。
<ブリコ・デポ:「Brico Warriors」>
4位:Salomon(サロモン) TV
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スポーツ用品ブランドのSalomon(サロモン)によるチャンネルは、コンテンツの幅が魅力です。
スポーツ用品の選び方やそのメンテナンス方法、スポーツ上達のヒントや、アスリートにフォーカスした動画など、全ファネルをカバーする多様なコンテンツを発信しており、大変成熟したチャンネル運用をしています。
今年から開始された「サステイナブル」をテーマとしたシリーズも人気で、時勢を読んだコンテンツ内容も大きなポイントと言えるでしょう。
ちなみに、このチャンネルでもっとも多く視聴されているのは「The Art of The Turn」というスキーに関する動画。2017年に投稿されたこの動画は今でも伸び続けており、YouTubeにおける長期的な戦略の重要性が伺えます。
(※画像:Salomon TVのスクリーンショット)
また「Salomon Athletes」として、提携しているアスリートYouTuberを紹介しており、インフルエンサーたちと相互関係を構築しています。
(※画像:Salomon TV「Salomon Athletes」スクリーンショット)
5位:VERSACE(ヴェルサーチェ)
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ヴェルサーチェは、36.6万人という登録者数を誇り、エンゲージメントも良好な順調に成長しているチャンネルです。
もっとも多くの視聴者を獲得しているのは9月末に配信された2022年春夏のショーの動画で、1位のルイ・ヴィトンと同じくライブ配信動画です。Z世代から支持を集めるイギリスのシンガーソングライター デュア・リパ(Dua Lipa)が出演し、リアルタイムで多くの視聴者を獲得。アーカイブも伸び続けています。
6位:Disneyland Paris(ディズニーランド・パリ)
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ディズニーランド・パリは1年前からTOP10に入っており、あともう少しで登録者数20万人になります。このアカウントもコンテンツに様々な工夫が見られます。
アトラクションやショーの動画はもちろんですが、その他にも例えば、各ゾーンの音と情景を1時間ゆっくりと楽しむ動画や、いくつかの人気スポットを360度動画で楽しむ動画、また、各アトラクションでのゲストの反応をまとめた「ディズニーランダー」シリーズなど、視聴者の視点に立ったコンテンツ作りをしていることが見て取れます。
7位: Armani(アルマーニ)
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アルマーニは、トップ10に入った3番目のラグジュアリーブランドとなりました。最新のウィメンズコレクションを発表したことで、大きく視聴者を伸ばしました。
東京オリンピック参加アスリートの動画や、ジョルジオ アルマーニのポートレートのようなやや長尺ビデオなど、同業界の他ブランドに比べて、ファッションだけではないより多様なフォーマットを採用しています。
38位:Air France(エールフランス航空)
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エールフランス航空がトップ10にランクイン。コロナ禍で厳しい状況にあるはずの航空会社ですが、市場が厳しい時こそYouTubeのような動画コミュニケーションにより、ユーザーとの接触を保つことが重要です。
エールフランスは、短いビデオでブランドのストーリーを語っています。例えば2021年9月に同社に初納入されたエアバスA220初号機が塗装される様子をタイムラプスで撮影した動画など、ブランドのマイルストーンを動画で紹介しています。
見る見るうちに茶色い機体が、エールフランスの特徴的な白を基調としたトリコロールカラーに色付けされていくさまは、飛行機マニアでなくても目をとめてしまいます。
9位:Quechua(ケシュア)
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Quechua(ケシュア)は、世界最大のスポーツ用品小売業者であるフランス企業Decathlon(デカトロン)が販売するハイキングやキャンプ用商材のブランドです。
カスタマーサービスに定評のあるデカトロンのブランド「ケシュア」のチャンネルでも、「How to…?」シリーズなどのヘルプ系動画が非常に充実しています。
サロモン同様、最も視聴されている動画は、ブランディング動画ではなく、テントの設営を行うチュートリアル動画です。テントの開け方から設置方法、使用方法、修理方法などを説明する実用的な動画ですが、918万回の視聴数を獲得しています。ユーザー目線で役に立つコンテンツが伸びやすいということが立証されています。
10位:Groupama(グルパマ)
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10位には、12か国で事業を展開する保険企業のGroupama(グルパマ)がランクインしました。このアカウントで注目すべきポイントは、ターゲットごとに最適化された動画作成です。代表的な動画シリーズを2つご紹介します。
「Histoires de Velo(自転車のストーリー)」シリーズでは、自転車スポーツに対するブランドの歴史的なコミットメントを強調しており、今まで関わってきた顧客に寄り添った形で、具体的な物語が展開されます。また、「Indispensable Agris(必要不可欠な農家)」シリーズは、YouTube上で、農業に興味のある熱心なコミュニティを巻き込むことに成功し、多くの新規登録者を生み出しているようです。
まとめ |
YouTubeという戦場に合った戦略的な運用をすることにより、確実にチャンネル登録者数を伸ばし、ビジネスに不可欠なタッチポイントとしている企業は多数あります。YouTubeチャンネルはあるものの、単なる「CMやWeb動画の格納場所」としての運用にとどまっている企業は、成長のチャンスを自ら手放しているとも言えるでしょう。
今後さらに加速化する動画マーケティングの中で、YouTubeアカウントの設計と運用は重要なポイントになってきます。
今回ご紹介したフランスの事例からは、業界を問わず、徹底してユーザーの視点に立ってコンテンツを設計するという姿勢に、学ぶ部分が多いのではないでしょうか。
参考記事:
https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1993.html
https://www.tubereach.com/fr/blog/barometre-tubereach-de-vitalite-des-chaines-de-marque-sur-youtube-troisieme-trimestre-2021/