(※上段:株式会社シンフィールド マーケ・採用・広報担当 田所洋平氏、下段:株式会社ADDIX デジタルマーケティング事業部 執行役員 中元直人)
株式会社シンフィールド マーケ・採用・広報担当 田所洋平氏(以下、シンフィールド田所氏):
今回は「VR×マンガによる新しいマーケティング手法の可能性を探る」というテーマで、「VR」と「マンガ」をかけ合わせたら、どんなことが出来そうなのか?について、深堀りしていきたいと思います。
まず、VRマーケティングを行っているADDIXさんから「VRの現状がどうなのか?」というところをお聞かせいただけますか?
株式会社ADDIX デジタルマーケティング事業部 執行役員 中元直人(以下、ADDIX中元):
私たちADDIXは、VRの制作だけをしている会社ではなく、DX実行支援企業として、企業の新規ビジネス創出や既存ビジネスのグロース支援を行っています。
企業様からVR導入のご相談をいただく機会は増えていると感じています。VRのご相談が増えている理由は、コロナ禍で非対面接触での顧客価値提供が求められていることが要因にあると思います。
またVRの制作会社が増えて提供サービスの種類が増えたことも理由の1つだと考えています。予算も多様化していて、簡易なサービスを活用すれば10万円代で実行できるものもありますし、非常に凝ったものなら1000万以上かけて作ることもあります。
ADDIXが提供するVRは、グロース支援施策の一環として、マーケティング・UX目線からの「VR」で、サービスそのものの提供というよりは、ターゲット顧客にとってVRがどういう位置付けになるかを、企業様のさまざまなニーズ、目的に合わせ、VRコンテンツの企画・プランニングから導入のご支援をしています。
シンフィールド田所氏:
私たちシンフィールドも、マンガを制作する会社ではなくて、マーケティングを目的としてマンガを活用した施策を提供する会社です。マンガマーケティング® を提唱した企業でもあり、商標登録も取っています。
お客様から「マンガって効果あるの?」とよく聞かれるのですが、私たちがなぜマンガという手法を使うのかといえば「効果が出やすいから」です。
マンガマーケティング®では、自らの課題に気づいていない「潜在層」へのアプローチが得意です。潜在層に自分事として「確かにそういうニーズがある」と気付かせることで、無理なく行動変容を促せるようにマーケティング視点でストーリーを構成していきます。
またマンガは他のストーリー性があるコンテンツと比べて、費用対効果の面でも優れています。ドラマや映画などは制作にお金がかかりますし、小説の場合はなかなか読んでもらえない。でも、マンガならついつい読んでしまいますよね。
ADDIX中元:
VRマーケティングはまだ新しく、効果については、一長一短な部分もありますが、もありますが、先日弊社がご支援したVRコンテンツで面白い結果が出ていました。
北欧デンマーク発の雑貨ブランド「Flying Tiger Copenhagen(フライング タイガー コペンハーゲン 以下、フライングタイガー)」様で、店内を歩いて回る楽しさをVRで体験再現するバーチャルストアツアーです。
弊社ではフライングタイガー様の公式SNSのサポートを行ってまして、運用している中で、店舗のライブ配信や店舗を素材としたストーリーズ、投稿など、店舗のコンテンツにファンの方からの反応がいいことを認識していました。そこで「店舗体験を自宅でできないか?」というところから、このVR企画が実現しました。
(※画像出典:フライングタイガー公式サイト「バーチャルストアツアー」お知らせ)
シンフィールド田所氏:
フジテレビの「めざましテレビ」でも取り上げられてましたよね。広告換算したら、かなり良い結果だったんじゃないですか。
ADDIX中元:
そうですね。効果は広告だけではなくて、誘導先のサイトトラフィックにも出ていました。
バーチャルストアツアーを公開した後の期間と、その前の期間を比較するとトラフィック量が増えています。
また、このコンテンツを経由してサイトを訪問したユーザーは、それ以外のユーザーと比較して滞在時間が1分以上長く、回遊率も高いという結果も出ています。
バーチャルストアを見て回ったことで、ユーザーの中で「ほしい!」という気持ちが高まっていたため、サイト内でも興味を持っていろいろな商品を見て回ってくれていたようです。
シンフィールド田所氏:
「ほしい!」という気持ちの高まりは、空間を体感できるVRならではの効果ですね。ECサイトはあっても、そこだけでは空間を感じることはできないですから。
店舗がない土地にいたり、さまざまな事情で店舗に行けない場合、好きなお店のバーチャルストアがあったら行きたいですし、行ってみたら「お店に行きたい!」となりますよね。
めちゃくちゃ楽しいだろうな と思います。
ADDIX中元:
「VRを導入したら、どれだけビジネスに効果があるか?」という点は未知数な部分があります。VRにユーザーの行動を後押しするような何かをプラスすることが出来たら、もっと安定して効果が出せるようになると考えています。
その点、マンガマーケティング®は、潜在層に働きかけてユーザーの行動変容を促せるのが強みなので、ぜひVRとかけ合わせて試してみたいです!
シンフィールド田所氏:
おっしゃるとおり、マンガマーケティング®は「後押しになる」「クロージングできる」というのが、もっとも大きなメリットなんです。
行動経済学に「人間は感情と理性で動きます」という話が出てくるんですが、結局、感情の方が強いし、合理的じゃないのが人間です。
理性に対しては、「スペック、価格、機能、デザイン」といったわかりやすいメリットを提示することで訴求できます。ところが、「感情の部分」へは簡単には訴求できないですし、自分事として感じてもらうことが難しい。「この商品サービスを私が使う必要あるの?」と、他人事として捉えられてしまいがちです。
(※向かって左:株式会社シンフィールド マーケ・採用・広報担当 田所洋平氏、同右:株式会社ADDIX デジタルマーケティング事業部 執行役員 中元直人)
ADDIX中元:
マンガやマンガ動画の広告は、ついつい観ちゃいますね。広告だと知っていても、ストーリーが気になってついつい最後まで観てしまった時に、マンガの強さを実感します。
マンガの持つ、ストーリーに触れることで無理やり行動を変えられてしまうような強さは、現在のVRに欠けているエッセンスでもあります。
シンフィールド田所氏:
没入感のあるVR空間内でマンガのストーリーが進んでいったら、すごくいいプロモーションが出来そうな気がしますね。
商品やサービスは何かを解決するためにあるわけですが、ユーザーにはなかなか伝わってくれなかったりします。でも開発秘話など、作り手の思いをVRの中でストーリーとして展開できれば、ユーザーの腑に落ちる体験になるかもしれませんね。
ADDIX中元:
逆にマンガの中に入っていく、という方法もありますね。
以前、ポーラ美術館が所蔵するクロード・モネの絵画作品「睡蓮の池」の中に入る体験ができるVRコンテンツ(※1)ありました。
同じようにVRでマンガの世界を作り上げて、その中にユーザーが入り込む。そこで何かできるかな?というところを探っていくのも面白そうです。
シンフィールド田所氏:
VR空間の中で、平面のマンガを見せて、ストーリーを読んでもらうのもいいですね。1番費用をかけずに試せる方法です。
シンフィールド田所氏:
ハイブランドと人気キャラクターのコラボなども面白そうですね。
GUCCIがドラえもんとのコラボ商品を展開(※2)していましたが、もしブランドのストーリーとドラえもんの作品世界がコラボした世界感をVRで体験できたりしたら、もっと面白いコラボになったように思います。
マンガにも、ブランドにも、それぞれのストーリーがあります。そのストーリーに触れることで、ファンはもっと深く作品やブランドの世界観を知ることができます。
そう考えると、日本のブランドを世界に伝える時にも、VR×マンガというアプローチは効果がありそうですね。
ADDIX中元:
新しい手法ですし、今の段階で挑戦すればメディアに大きく取り上げてもらえるメリットもありますね。
マンガは「読みたい」と感じさせる力と、「続きが読みたい!」と思わせる力がどちらもすごいので、最初と最後のステップにマンガを持って来るのもよさそうです。
起承転結の「起」に当たるステップがマンガで、次の「承転」あたりをVRで体感させて、最後の「結」にまたマンガを持ってきてコンバージョンさせる、という設計もできるかもしれません。
シンフィールド田所氏:
それは、なかなかいいパターンですね。最終的には、マンガから外部サイトであるECに誘導して、そこでコンバージョンするという形にも出来そうです。
ユーザーがコンバージョンしない理由は、「ほしい」「自分に必要だ」という感情が購入に至るレベルに育っていないことなんです。マンガマーケティング®では、ストーリーに触れることで理性と感情を育ててコンバージョンにつなげます。
一方VRは、感覚的な五感に影響を与えることができます。例えば、知っているけれども、
語られていない背景をVRで体感させるとか。感情を育てるベースとなる情報を感覚的に与えることも、VRならできるんじゃないでしょうか。
ADDIX中元:
他にもいろいろなかけ合わせができそうです。いろいろな方からアイデアやご意見をいただいて、挑戦していきたいですね。
シンフィールド田所氏:
今はまだ「VR×マンガ」のマーケティングアプローチで、投資した費用をどのくらい回収できるのか?といった実際の効果はわかりません。でもやってみないことには何もわかりませんから、ある程度の仮説は立てた上で「やるしかない」んじゃないかと思います。
直感的にはすごい良い数字が出そうですよね。VRの可能性自体は本当にすごくあると感じています。
ADDIX中元:
最近、人の価値基準がどんどん変わっていっていると感じます。個人的には、オフフラインとオンラインが限りなく融合する世界が将来必ずやってくると思っています。
そうすると、仮想空間での広告・マーケティング活動に特化した「仮想空間マーケティングプランナー」みたいな人が出てくるように思います。次世代のマーケターは、仮想空間でどう広告を見せるか?という知見やセンスが求められるようになるかもしれません。
その点VRは、すごく大きな可能性がありますね。
まずはVRとマンガをかけ合わせた新しい施策に、ぜひ一緒に挑戦していきたいです。
オンラインでリアルな体験が再現できるVRマーケティングは、非接触での体験が主流となった今、有効な「体験価値」提供の手法として注目されています。
また一方、マンガやマンガ動画によってユーザーの感情を動かし、行動変容を促すマンガマーケティング®は、すでにユーザーの行動の後押しできる、費用対効果の高いマーケティング手法として確立されています。
VRとマンガはどちらも「視覚」を介した体験提供の手段ですが、それぞれ得意とする領域、効果は異なっています。それは、その2つをかけ合わせた相乗効果によって、今までにない効果的なマーケティング手法が生まれる可能性を秘めているということでもあります。
VRとマーケティングを組み合わせたマーケティングに興味を持たれた方は、今回のセッションでの活用アイディアを参考に新たなアプローチに挑戦してみてはいかがでしょうか。
(※1)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001316.000005912.html
(※2)https://www.gucci.com/jp/ja/st/capsule/doraemon
【セミナー概要】
セミナータイトル:
「VR×マンガ」仮想現実で人を動かせ!
消費者の態度変容を促す、新たなマーケティング手法の可能性を探る
開催日時:2021年4月14日(水)16:00~17:00
会場:オンライン(Zoom)
参加費:無料
主催:株式会社ADDIX、株式会社シンフィールド
講師:株式会社ADDIX 中元直人・株式会社シンフィールド 田所洋平
■関連サイト
株式会社シンフィールド:https://shinfield.jp/