多くのアパレルブランドにとって、SNSは顧客との重要なタッチポイントです。しかし、SNSで「何を」「どのくらい」実施すべきかが明確ではないまま、数多くの数値目標が与えられているSNS担当者も少なくないのではないでしょうか。
SNSの数多くの指標から、目標達成につながる重要なKPIを見きわめる手法とは? KPIの見きわめに役立つ「KPIツリー」の活用方法について、アパレルブランドのSNS運用を例にご紹介していきます。
【目次】 |
1. 「KPIツリー」とは? |
「KPIツリー」とはどういうものでしょうか。
KPIの設定は、KGI、CSFからの階層構造で考えていくということを、『売上に貢献できる「正しいKPI」とは? 基礎知識とKGI・CSFとの関係性を学ぼう!』でご紹介しました。この「KGIからの階層構造に落としこみ、KPI設定をする」というプロセスにおいて、有効なツールが「KPIツリー」です。
「KPIツリー」では、問題をツリー構造に分解し、論理的に解決の方法をさぐるための手法である「ロジックツリー」の考え方を用いて、KPIを設定していきます。
2. 「KPIツリー」を作成するメリットは? |
KPIツリーの作成には、次のようなメリットがあります。
【KPIツリー作成のメリット】 |
メリット:①重要指標が明らかになる
KPIツリーを作成することでKGI達成へのルートが明らかになり、多くの指標から重視すべき指標をしぼり込むことができます。
メリット:②組織内で目的を共有しやすい
KGIとKPIの関係をひと目でわかるツリー図にすることで、組織内で目的や意識を共有しやすくなります。
メリット:③PDCAが回しやすい
KGIが達成できなかった際には、ツリー図のどの地点でうまく結果が出せなかったのかをチェックすることで、原因となったポイントを見つけてPDCAを回しやすくなります。
3. 「KPIツリー」を使ったKPI設定のプロセスは? |
KPIツリーを用いて、具体的には下記の4つのプロセスでKPIを設定します。
【KPIツリーを使ったKPI設定プロセス】 |
はじめてKPIツリー作成に取り組むときは、STEP2「KGIを構成要素に分解する」のプロセスで、かなり時間をかけて考えを深める必要があります。1度作ってしまえば、以降はこのツリー図をベースにして考えを深めていくことができますから、この工程でしっかりと考えることをおすすめします。
4. アパレルSNSの「KPIツリー」作成ポイントは? |
それでは、アパレルブランドのSNS運用のKPIツリー作成について具体的に考えていきましょう。
SNSを運用には、かなり数多くの指標があり、それぞれを数値データとして取ることができます。また、SNSといってもInstagram、Twitter、Facebook、などいくつかの種類があり、それぞれの特性は異なっています。なんの戦略もなく、ただ漠然と「SNSを運用しよう!」というだけでは成果にはつながりません。
SNS運用では、まず「何を目的に」「どのSNSで」「何を」「どの程度」やれば、目標の達成につながるのか?というプランをしっかり考えることが大切です。そのプランを考えるうえで、役立つのが「KPIツリー」です。
アパレルの課題は、短期的売上とブランドイメージの両立
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アパレルには、「売上」と「ブランド」に関するとあるジレンマがあります。
それは、「『短期的な売上』を追求しすぎると、『長期的な売上』が減少する」可能性が高くなる、ということです。
たとえば、とあるブランドのKGIが「売上」だとします。そのとき「売上=達成期限までの売上金額」と捉えると、クーポンやセールなどの施策はとても大きな効果があります。ですが、このような価格訴求の施策をやりすぎてしまうと、大切なブランド資産である「ブランドイメージ」を損ねてしまう場合があります。
そこでアパレルでKGIを「売上」とする場合におすすめの手法が、「短期的売上」と「持続的売上」の2つの軸に分けて施策を考えることです。ここでは、さらに「CRM」と「市場形成」を加えた4つの軸で考えてもよいでしょう。「短期的売上」と「持続的売上」それぞれに対してCSFとKPIを設定し、予算のバランスを考えていきます。
2つの軸で考える「アパレルのKPIツリー」の作成例
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この図(図2)ではKGIを、「短期的売上(=需要喚起)」と「長期的売上(=ブランディング)」の2つに分けて設定しています。
【図2:KPIツリー作成例「アパレルブランドのSNS運用」】
この図(図2)ではアパレルの特性にあわせて、KGIを「短期的売上(=需要喚起)」と「長期的売上(=ブランディング)」の2つに分けて設定し、KPIツリーを2つの軸で作成しています。
また、この図の例では、各KPIにひもづく具体的な「コンテンツカテゴリ」への落とし込みをおこなっています。このように、KPIの達成に有効なコンテンツ施策までをイメージしておくと、実際の施策立案がスムーズになります。
2つの軸で考える「アパレルのKPIツリー」の作成例
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KPIツリー図を用いて、SNS運用のKPI設定を2つ、または4つの軸に分けて行うメリットとして、目的に応じてそれぞれの項目への予算配分をあらかじめ決めておけることがあります。KPIに連動させた運用がとてもしやすくなりますので、予算への落とし込みまで行っておくのがおすすめです。
【図3:「アパレルブランドのSNS運用」の予算配分:サンプル例1】
【図4:「アパレルブランドのSNS運用」の予算配分:サンプル例2】
まとめ:SNSは重要なコミュニケーションツール。「KPIツリー」で精度を高めよう!
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今やSNSはアパレルにとって、顧客に情報を届けるツールとして欠かすことのできない存在です。運用担当者の負荷を軽くする取り組みと共に、その効果を最大化させて顧客とのよりよいコミュニケーションを継続していくことが望まれます。
いままでそうしてきたからといった理由で、KGIと関連のない指標をKPIに設定してしまうと、最悪の場合には「SNSには効果がない」と判断されてしまう可能性もあります。KPIツリーの活用によって、このような目標達成にむすびつかないKPIを設定してしまうリスクを減らすことができます。
KPIツリーの活用で目標達成につながるKPIを設定し、SNS運用の効果をさらに高めていきましょう。