VRやARに続き、今もっとも注目されている技術の一つ「MR」。その最新技術を駆使したMRお化け屋敷「Magic-Reality: Corridor」の体験取材から、MRの特徴と今後の可能性について探りました。
そもそもMRとは?VRやARとは具体的にどこが違う?
最近はテレビや各種メディアでもよく目にする「MR」。MRとは、Mixed Realityの略で「複合現実」と呼ばれている技術です。
人工的な仮想世界を見せるVR(Virtual Reality : バーチャルリアリティ)や、現実世界に付加情報を与えて拡張するAR(Augmented Reality : 拡張現実)とは異なり、人工的な仮想世界に現実世界の情報を取り込み、現実世界と仮想世界を融合させた世界。もっとも大きな違いは、MRの世界内では、仮想世界のモノと現実世界のモノが相互に影響することです。
日本の最新技術が魅せる!世界初のMRお化け屋敷「Magic-Reality: Corridor」
最新のMR技術を活用し、この夏に赤坂サカスで開催され注目を浴びたMRお化け屋敷「Magic-Reality: Corridor(マジックリアリティ・コリドール)」。体験者は期間中約5,000人にも上り大成功を収めました。参加者は2人1組となって、美しくも恐ろしい非日常の世界を自分の足で歩み進めていきますが、中には怖すぎて途中でギブアップする方もいたそうです。
実際に体験!MRの仕組みと特徴は?
この「Magic-Reality: Corridor」を創り上げた、Tyffon株式会社のオフィスにて実際に体験しました。
体験者は、まずバックパック型のPCを背負い、ヘッドマウントディスプレイを装着します。装着直後は仰々しい装置のように感じますが、いざ仮想世界に入り込むと、付けているのを忘れてしまい、さほど重さや違和感を感じさせませんでした。また、片手にはランタンを持たされます。
実際には、体験者は緑色の部屋をぐるぐる回っているだけですが、体験している本人が目にしているのは、古めかしい洋館での恐怖の世界。目の前には暗い廊下が続き、床に空いた大きな穴を避けて歩いたり、ドアがひとりでに閉まったり、恐ろしい怪物が突然襲ってきたり、乗り込んだエレベーターが急降下したり…と、とても9m×5mの四角い部屋にいるとは思えない世界が広がっています。
さらにMRを活用したこのコンテンツでは、仮想世界をただ観るだけのVRとは異なり、自分が実際にその世界に入り込んで、その世界に影響を及ぼすことができます。具体的にはや同伴者の姿や手に持ったランタンを仮想世界の中でも見ることができ、またランタンの動きをセンサーが捉え、動かしたとおりに仮想世界の中を明るく照らし出します。
仕組みとしては、体験者のヘッドマウントディスプレイに付いているカメラによって撮影される手やランタンなどの映像を、リアルタイムに体験者が見ている3D映像の中に落とし込み、現実と虚構が複合した1つのコンテンツとして体験させているそうです。手やランタンの映像は、仮想空間内の照明などを反映した上で映し出されています。また体験者の位置情報は常に把握されており、その動きや位置と連動して映像や音楽が流れるよう設計されていました。
「どれだけ心に残る体験ができるかが大事。」製作者が語るMRの意義
驚かせ怖がらせながらも、丁寧に作り込まれた洋館の世界が体験者を異次元に誘い込み、捉えて離さない「Magic-Reality: Corridor」。コンテンツ製作のこだわりやMRの未来について、製作した「Tyffon」代表の深澤研氏に伺いました。
お話を伺った方:Tyffon株式会社 CEO 深澤研氏
インタビュアー:BWRITE編集部 鵜飼佐保子
(※Tyffon株式会社 CEO 深澤研氏。)
― なぜ今回「Magic-Reality: Corridor」というMRを用いたお化け屋敷というコンテンツを創られたのでしょうか?
深澤氏:幼少の頃から、特別な世界観に入り込んでいくような体験やアトラクションを作りたいという思いがありました。この作品では、実際に自分達自身がその世界に入り込んでいるかのような没入感を与え、より一層作品を感じ楽しんでもらいたいと考えました。特にMRという技術自体にこだわっているわけではなく、今までできなかった体験を提供するためのツールとしてMRを用いています。例えば、複数人で仮想世界に入り込み、かつ、お互いの姿が見える。さらに、自分の腕が見えて、手に持っているランタンで辺りを照らせる。こういったことは、現実世界と仮想世界をミックスするMRでしか実現できません。
― MR技術には、アメリカと日本とで差があるとお考えですか?
深澤氏: 2014年に渡米した当時、アメリカではすでにVRをどう利用していくか真剣に議論されており、ソフト・ハードどちらの技術も進んでいました。ただし、演出、世界観、体験、コンテンツ自体はもっといいものを作れると思いました。MRを使ってどのような体験をさせるかはまだみんな試行錯誤の時期。確立していないからこそチャンスが大きい。私たちは演出などの構想は世界トップレベルにいると自負しています。
「Magic-Reality: Corridor」でも、世界観を非常に大事にしています。純粋に怖さだけを追求してしまうと体験者が雰囲気を楽しむ余裕がなくなってしまうため、その辺りのバランスも考えて創りこんでいます。今後も、どれだけ心に残る体験ができるか、どれだけ今まで感じたことのない感情を想起させるコンテンツを提供できるかを大事にしていきたいです。
― 今後のMRの可能性については、どのようにお考えですか?
深澤氏:現実世界と仮想世界の見分けがつかなくなって、どちらも自然なものとして認識されるようになると思います。数年後にはデバイスがサングラスのような簡単にかけられるものになり、大げさな機材や装備がなくても、誰もが気軽に日常生活の中でアトラクションを体験できるような方向に向かっていくはずです。同じ場所でも人によって見ているものが異なり、様々なレイヤーの世界が重なり合っている状態になると思います。
その一方で、世界のいろいろな場所にいる人が、同時に同じ場所にいるような体験も出来るようになります。そうなると、距離や物理的なハードルは徐々になくなっていくと思います。文化の境界が曖昧になり、多様性が実現されていく世界になっていくのかもしれませんね。
MRの可能性は無限大!エンタメ、イベント、店舗など利用シーンは拡大へ。
MRは、エンターテイメントとして新たな体験を提供するほか、イベントや店舗コンテンツ、その他ありとあらゆるシーンでの活用が想定されます。
歴史を遡ると、これまで全てのコンテンツはデバイスの中に格納されたものでした。しかし、自分の感覚や体の一部が見える状態で仮想世界にも同時に存在し、その世界に影響を与え、さらには複数人で同じ体験をすることも可能なMRは、この歴史を大きく変える存在であることは明らかです。
深澤氏の目指す、MRによって文化の境界が曖昧になることで多様性が実現されていく世界も、遠い未来ではないかもしれません。
■MRシアター「TYFFONIUM」が東京・お台場に誕生。
~ダイバーシティ東京プラザに21世紀のホーンテッドマンションが登場
お化け屋敷と最先端のMR(複合現実)技術の融合~
10月28日(土)、Tyffonは、同社が手掛けるMRコンテンツが楽しめる常設シアター 「TYFFONIUM(ティフォニウム)」を、ダイバーシティ東京(東京都江東区青海の 複合商業施設、三井不動産商業マネジメントが運営)にオープンしました。
オープン時のコンテンツは「Magic-Reality: Corridor」のみですが、来年3月頃に、 ファンタジーの海をテーマにした新たなMRアトラクションをオープン予定。また、 今後は「Magic-Reality: Corridor」のバージョンアップや、コンテンツ内に4Dの 要素を取り入れることも検討中です。
【MRシアター「TYFFONIUM(ティフォニウム)」概要】
公式サイト:http://www.tyffonium.com/
オープン日:2017年10月28日(土)
予約方法:公式サイト内で事前予約が可能。
営業時間:10~21時
※混雑状況により事前に締め切りの可能性あり。
場所:ダイバーシティ東京5F(住所:東京都江東区青海1-1-10)
対象年齢:13歳以上
料金:フルバージョン:2,000円、ショートバージョン:1,300円
※「Magic-Reality: Corridor」の体験前には、公式サイト内の注意事項の確認を推奨。
■「Magic-Reality: Corridor(コリドール)」公式PV:
https://goo.gl/UQaoqR
■Tyffon(ティフォン):
http://www.tyffon.com/ja/
ライタープロフィール
鵜飼佐保子(株式会社ADDIX パリ駐在所)
法政大学在学中、フランスに2度留学。卒業後はデジタルマーケティング企業ADDIXに入社し、企画営業や制作、ソーシャルメディアディレクター等を経て、現在はフランスパリに駐在所を立ち上げ現地で活動中。BWRITEでは主にフランスを含む海外のケーススタディ記事を執筆。
※本記事中のイベント情報、人物の所属や役職等は記事公開時点のものです。
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