日本にも2018年に進出した世界屈指のスポーツブランドメーカー「Decathlon(デカトロン)」は、早くも2017年にはフランス国内の13店舗にて、VRを活用した販売促進施策を展開しています。ファミリー用の大きなテントをVRで体験させることにより、店舗のスペース不足を補いながら、顧客に新しい体験を提供しています。
VR内では、明るさと天気の種類(雨風)を調整でき、山・森・砂漠の3つの環境でテントのクオリティを体験できるようになっています。このVR施策を行った13店舗の調査によると、結果として、95%以上のユーザーがこの新しいショッピング体験を気に入り、89%が決定的な体験だったと話しています。
「デカトロン」ファミリー用テントVR体験
https://youtu.be/IupPYd1HRfU
2020年、新型コロナの影響によって世界中でほとんどのスポーツイベントがキャンセルされる中、7月に予定されていた世界的な自転車ロードレース「ツール・ド・フランス」も中止となりました。しかし、自転車ファンの強固な連帯を表すキャンペーンとして「ツール・ド・フランス バーチャル2020(Tour de France Virtuel 2020)」が企画され、VRレースとして初開催されました。
最初の3週間の週末は、VRレースの一部として、男女両方のプロのレースが開催されました。また、ホームサイクリングの発展をサポートするために、世界中のアマチュアサイクリストも同じ週末に参加することを可能し、VR を通して世界をつなぐスポーツイベントとなりました。
Tour de France Virtuel 2020 - Etape 6 – Résumé
(「仮想ツール・ド・フランス2020」6ステップ目のダイジェスト動画)
https://youtu.be/a7y-6DX3_G0
2017年にフランス・モンペリエで生まれたスタートアップ企業「fit immersion」は、家やジムにいながら、世界の美しい景色の中でのサイクリングを叶えます。
雨の日や外出できないコロナ禍でも、エアロバイクに乗ってヘッドセットを装着すれば、気分爽快に好きな場所を自転車で走り抜けることができます。ヘッドセットを使ったV Rは、自転車の他にも、フェンシング、テニス、スカイダイビング、ボクシング、チームスポーツなど、多くのスポーツで開発が進んでいます。
(※画像出典:https://fitimmersion.com/)
VRは、プロのアスリートの可能性をも広げます。怪我のリスクを減らしながら、アスリートの運動能力を向上させるためにVRの特性を活用するという取り組みは、レンヌ第2大学の研究者であるRichard Kulpa(リシャール・クルパ)氏によって提唱されました。
「試合の状況が管理され、アスリートがプレーに関連して何をしているのかを分析、理解、定量化できるようになります。主な目的は、怪我のリスクを最小限に抑えながら、アスリートのトレーニング量を増やすことです」(談:Richard Kulpa)
また、実際にこのトレーニングを実施しているプロボクシング選手Sarah Rochdi(サラ・ロクディ)氏も満足しています。
「殴られたり怪我をしたりすることを恐れずにトレーニングできるようになります。これを使いながら外観を調整し、ボクサーの姿勢に反応する方法、攻撃を予測する方法、打撃がどのように発生するかを知ることができます。また、パンデミックのような期間でも個人訓練することができるということも大きな利点です。」(談:Sarah Rochdi)
このプロジェクトは2024年のパリオリンピックに向けて進められています。
アスリートのためのVRトレーニングの可能性
https://youtu.be/EgVzs8nPs_g
「2025年以前に、モバイルデバイスでスタジアム内を見られるようになるでしょう。5G活用によって、スタジアムのVR(360度)コンテンツを大規模に中継できるようになりました。」と米テクノロジー企業のHarmonic社のThierry Fautier(ティエリー・フォーティエ)氏は予測しています。フォーティエ氏によれば、早ければ2024年のパリオリンピックで最初の展開があると予測しており、もしそれが成功すれば、2025年以降に広く展開される可能性があります。
さらに、英国テレビスポーツチャンネルのBT Sport社は、スポーツスタジアム内と自宅でのライブブロードキャストの両方で、5Gを介してインタラクティブな没入型体験を提供する方法を模索しています。このアイデアには、ボクシングの試合をリアルタイムでホログラム生成し、視聴者のテーブルにストリーミングすることも含まれています。まだ概念実証の段階ではありますが、政府からの援助もあり、近い未来にテーブルの上でリアルタイムかつ3Dでスポーツ観戦が楽しめる日が来るかもしれません。
(※画像出典:https://www.streamingmedia.com/Articles/ReadArticle.aspx?ArticleID=145251)
VRとスポーツの関係はまだ始まったばかりであり、未来は可能性に満ちています。
5Gの導入だけでなく、人間工学の向上とヘッドセットの価格低下が生み出す急速な技術開発、さらにはコロナ禍では無視できない衛生面での「非接触」のメリットが、アスリートやスポーツ観戦者、自宅やジムでのトレーニング愛好者などにVR利用の習慣化を促すことも、市場の明るい未来を表しています。
2020年は手の動きと連動した「ハンドトラッキング」がホットトピックでしたが、将来的には顔や足など手以外の部分もVRコンテンツに連動できるようになる見込みです。 スポーツにおけるVR活用方法は、無限大の広がりを見せていくでしょう。