2019年4月、長い歴史を持つパリのノートルダム大聖堂で火災が発生し、寺院は大きく破損してしまいました。
その翌年、パリ中心地にあるVR施設FlyViewにて「ノートルダム大聖堂の再建」というタイトルの18分のVR体験が提供開始されました。
体験者はVRヘッドセットを着用し、回転するアームチェアに座って、鐘や屋根に設置されたガーゴイル像のクローズアップなど、火災前の大聖堂の姿を見ることができます。
VR体験の価格は19ユーロ(約2,500円)で、収益の一部はノートルダム大聖堂 の再建に寄付されます。これまでに約1万人がこのVR体験に参加しました。
▼VR体験「ノートルダム大聖堂の再建」プロモーションビデオ▼
Rebuilding Notre- Dame – FlyView
美しいパリの街を歩きながら、時間を遡って中世のパリにタイムスリップすることも可能です。
パリの主要スポットに点在するスタンド式のVR端末「タイムスコープ」に設置された双眼鏡を覗き込むと、いつでも3D映像で再現された「昔のパリ」を見ることができます。
(画像出典:https://www.sortiraparis.com/actualites/innovation/articles/160503-timescope-la-borne-vr-qui-fait-voyager-paris-dans-le-temps)
1419年のバスティーユ広場、1789年のグレーブ広場、または中世のセーヌ河岸を旅することができ、観光スポットの歴史的背景を学ぶこともできます。
▼「タイムスコープ」イメージ動画▼
LA PLACE DE GRÈVE EN 1628, PAR TIMESCOPE
ヴェルサイユ宮殿でも、VRで自由に散策できるようになりました。有名な鏡の間、大トリアノン、王室、庭園や噴水など、見どころを一通り回遊することができます。Google Arts&Cultureと提携しており、無料で自由にアクセスすることができます。
▼ヴェルサイユ宮殿VRツアー▼
https://artsandculture.google.com/project/versailles-never-seen-before
(※ヴェルサイユ宮殿VRツアー:https://artsandculture.google.com/project/versailles-never-seen-beforeスクリーンショット)
フランス ノルマンディー地方南部に位置するジヴェルニーには、名画「睡蓮」などで有名な印象派の画家 クロード・モネが暮らした「モネの家」が観光名所として残っています。「モネの家」では、自宅内をVRで回遊できるガイド付きバーチャルツアーを提供しています。
多くの部屋の壁に日本の浮世絵が多数飾られている様子からは、当時のフランスでの日本文化人気もうかがえます。モネのマニアでなくても楽しめるVRコンテンツとなっています。
▼モネの家VRツアー▼
https://fondation-monet.com/visite-virtuelle/
(※モネの家VRツアー:https://fondation-monet.com/visite-virtuelle/スクリーンショット)
パリ市内にはVRを使用したエンターテイメント施設も多く存在しています。その中から2つをご紹介します。
総合商業施設ラ・ヴィレットにある「iFly」は、大空での自由落下体験ができるVRサービスです。
事前にヘルメットとヘッドセットを着用し、強い気流が発生する筒型の空間に入ります。視界には大空が広がり、飛行機から飛び降りるような自由落下体験を提供します。インストラクターが同行することで、飛行士は安定した姿勢を保ち十分に楽しむことができます。
▼「iFly」体験の様子▼
https://www.instagram.com/p/Bj72HpGlLW9/
「FlyView」はパリ中心地にあるVR施設です。まるで飛行機の搭乗口のような入り口を通過して施設内に入り、専用のシートベルトを締めてVRヘッドセットを着用するとパリの空の旅に出発します。ジェットパックが映像と連動して実際に動くため、本当に空を飛んでいるような体験をすることができます。
エッフェル塔、凱旋門、シャンゼリゼ大通り、セーヌ川、ルーブル美術館などなど、街自体がひとつの美術館のようなパリを、空から満喫できるVR体験があります。パリの街を歩き尽くした人には特にオススメです。
▼「FlyView:L'incroyable expérience de survol de Paris」イメージビデオ▼
https://youtu.be/I-uDgjP-i8g
2000年代頃から活用されてきたVRやARなどのXR技術ですが、現在再び注目を集めています。その理由としては、5Gの実用化や新型コロナウイルス感染拡大の影響だけではなく、XRが「目新しいもの」と認識される段階を卒業し、より実用的、かつ日常的なニーズへの活用が進んだことが挙げられるでしょう。
技術の進化と、ユーザーのニーズと結びついた活用法が顕在化された今日、国境を越えた新しい観光の可能性が花開いています。
フランスのVRを用いた観光施策の特徴は、VRという技術そのものではなく、それを利用していかにユーザーを楽しませる体験を作るかというコンテンツプランニングの視点があるところです。
コロナ収束後に観光ニーズの盛り上げ施策が求められる日本にとって、フランスのVR活用事例は大いに参考にできるのではないでしょうか。