コロナ禍により、非接触、非対面な行動を求められたことで、人々の生活のデジタル化が加速し、企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が急務となっています。しかしDXに取り組み始めた企業では、経営層やDX推進担当者から「何をしたらいいのかわからない」「何から手をつけるべきかわからない」という声も聞かれます。
DXの取り組みをどう始めるべきか?
DX実行支援を提供するADDIXにて、企業の「新規事業創出」や「既存事業改善・収益化」の支援を行ってきた、執行役員 久保倉に話を聞きました。
(インタビュー対象者:株式会社ADDIX 執行役員 久保倉淳)
※本記事内の部署名・所属等は記事公開時点のものです。
【目次】 |
1.コロナ禍が世界を変えた!DXを加速する既存ビジネスへの危機感 |
―日本でも、コロナ禍によってDXが加速しています。「DXを始めたい」という企業からのご相談も増えているのではないでしょうか?
株式会社ADDIX 執行役員 久保倉淳(以降、久保倉):
「何かを変えなければいけない」という思いをお持ちの企業が増えている印象です。「DXを始めたい」とは言われず、「デジタルを使って、何か新しいビジネスを始めたい」という感じでしょうか。結果、DXを実行されていますね。
背景には、これまで培ってきたビジネスモデルが急速に立ち行かなくなっている現状があります。
今までは問題なく成り立ってきたビジネススタイルが、急激に古いものになってしまっている。体感ですが、スピード感としては10年分ほど一気に時間が進んでしまったようにも思えます。
ビフォアコロナの頃も、テレワークやビデオ会議などを活用している人はいました。とは言え、対面を主とし、テレワークやビデオ会議はあくまでもサブでした。それが、この1年で、人々の仕事や生活は半強制的にデジタルに依存することとなり、「接触」が忌避されて、「非接触」が評価される世界になりました。。
そもそもDXは、デジタル化した生活者が居てこその話です。デジタルへの依存度が高まったことで、人々を取り巻く生活環境も大きく変化し、生活者の価値観や行動も変わりました。生活者が変われば、ビジネスも変わらなければ成立しません。
<DX=デジタル化した生活者から生まれるデジタル変革>
2. デジタルで何を目指すか? DXの分類から自社のスタンスを考える |
―ビジネスそのものが成り立たなくなる危機感をお持ちの企業が増えているんですね。とはいえDXを始めようとしても、「どう始めたらいいのかわからない」という話もお聞きします。
久保倉:
自社がDXで何を実現したいのか。デジタルを活用して、自社はどう収益を得ていきたいと考えているのか。まずはその部分を明らかすることから始めるのも方法の1つです。
DXという言葉は、かなり幅広い範囲を含んで使われているように感じています。
例を挙げると、例えば、「デジタル化による工数やコストの削減」や「デジタルを活用した新たな事業やサービスの創出」のどちらもDXという言葉が使われています。
そういった面からも、自社がDXを実行する上で目指すべき内容は何なのか、DXに対し、自社としてどんなスタンスで望むのか、などを整理することで、優先して取り組むべきことが見えてくるのではないでしょうか。
ADDIXでは、幅広い意味の持つDXを「ビジネスモデルの新しさ」と「効果の方向性」で整理・分類しています。横軸に「ビジネスモデルの新しさ」を、縦軸に「効果の方向性」を置いて、DXを4象限にまとめる考え方です。
<ADDIXのDX推進フロー(DXの整理・分類の考え方)>
この考え方では、DXを大きく3つに分け、進行レベル順に、
①「レガシー化したプロセスの再構築」
②「デジタルシフト」
③「デジタルビジネス」
としています。
①の「レガシー化したプロセスの再構築」は、既存の仕組みやビジネスは変えずに、デジタル化によるコスト削減や効率化で収益増を目指す取り組みです。
例を挙げると、紙の帳票をExcelやソフトに置き換える、手入力をRPAに置き換える、といったたデジタル技術による作業の自動化・効率化などがあります。
②の「デジタルシフト」は、デジタルを活用して収益力を高める取り組みです。データを活用した顧客関係の強化や、販売チャネルの拡張などが含まれます。
そして③の「デジタルビジネス」は、0→1でデジタルを活用した新規ビジネスを立ち上げて、収益を生む新たな仕組みづくりを目指す取り組みです。ビジネスモデルの転換、新たな顧客価値創出、デジタルバリューチェーンの確立などが含まれます。
この3つのDXは、必ずしも①②③の順に取り組まなければいけないわけではありません。また、全部やらなければいけないわけでもありません。
まずDXで自社が何を優先すべきなのか。
コスト削減なのか、収益力アップなのか。既存のビジネスモデルで進めるのか、新たに構築するのか。
もし今、自社が何を目指していくべきかが見えていない状況であるならば、この考え方を1つの参考にしていただければと思います。
3.最初から「アプリを作る」ことが目的だと、DXは失敗する?! |
―DXといっても様々な取り組みが含まれるとのことですが、実際にはどういったご相談が多いですか。
久保倉:
本当に様々です。コスト削減が目的の企業もいれば、全く新しいビジネスを0から作ることが目的の企業もいます。
目的は様々ですが、相談内容としては「これを実現したいけど、どうすればいいのかわからない」というお話が多いです。
実際にDXを実行される企業は、「会社としてどうしたいのか」という目指すべき姿のイメージをお持ちです。逆にお持ちではない企業は、DXを実行することが難しいと思っております。
ADDIXは、目指すべき姿のイメージから逆算し、何からどうやって始めるのかを考えるバックキャスティングの方法で、お客様に伴走しDXを進めていきます。具体的には、企業様のご相談内容に沿って、調査・分析を行い、その結果を踏まえて戦略を立ててご提案します。
DXと言っても、初期の企画や戦略設計の部分はデジタルとは無縁の地道な作業の積み重ねです。その部分がしっかり出来ていないと、DXの成功は難しくなりますし、その部分こそ私たち実行支援会社が多くの企業様に必要とされる理由でもあります。
目指すべき姿をお持ちでない企業からは往々にして、デジタル化だから「アプリを作るんだ!」といったご相談をされたりします。こういった相談の場合は、DXの取り組みが失敗に終わることが多いと感じます。DXは結局のところ「自社のビジネスをどうするか?」についての問題です。決して、ツールを作って終わりではありません。
4.DXのビジネス戦略の重要性 前段階にあるビジネスの土台づくり |
―DXといっても、必ずしもデジタルに関連することだけやればいいというわけではないんですね。
久保倉:
DXの教科書的なものやネット上の記事などでは、「UI/UX」や「組織」に関することが大きく取り上げられることが多いように感じます。もちろん大事なことではありますが、実際にDXを実行する上では、どちらもプロセスの後半に登場することです。
DX実行では、後半のプロセスに行けば行くほど、デジタルの部分が多くなっていきますが、初期にはデジタルとは無縁のプロセスがほとんどです。
具体的には、調査や分析、アイデア出し、事業やサービスのモデル構築、事業計画と、その数値目標であるKPI/KGIの設計、過去データを紐解いての成長予測、といった、いわば「見えないデザイン」とも言うべきプロセスが前半にあります。
<DXの実行プロセス例>
まず、そういった前半部分をしっかり行うことが重要で、その先に事業やサービス、プラットフォームなどを「作りこむ」というフェーズ、つまり「見えるデザイン」の部分であるUI/UXのデザインや開発があります。またさらにその先に、実際にビジネスを動かしていくための、運用体制構築や組織の見直しなどがあります。
私たちADDIXは、特にこの初期の部分、「見えないデザイン」であるビジネス戦略のデザインを得意としています。その源泉は、各メンバーがこれまでに携わってきた様々な業界におけるビジネスの豊富な知見や、スペシャリストメンバーが持つ専門知識であったりします。
DX実行支援会社に求められる部分は、「DX」よりも「実行支援」のほうが多分、比重が高いと思います。
企業様の「DXをどう実行するのか?」という課題に対して、現状分析から事業計画立案などのビジネス戦略策定から、UI/UXデザインや開発、グロースハックに至るまで、一気通貫での実行支援を今後もご提供していければ幸いです。
まとめ |
コロナ禍が加速した生活者や市場環境のデジタル変革によって、企業のDXの取り組みは待ったなしの状況となりました。
DXで自社のビジネスを今後どうしていくべきかは、各企業が自ら考えて決めていく問題です。しかし「どうやって実行していくか」の部分は、DX支援企業など、プロジェクト企画や実行、運用に知見のあるパートナー企業のサポートを得る方法もあります。
ADDIXは、調査から仮説検証、収益・事業モデル、KPI/KGIなどの目標数値設計と評価方法といったビジネスの土台作りはもちろん、その先の「見えるデザイン」の部分、UI/UXのデザインから開発、グロースハックに至るまで伴走支援型のトータルサポートの提供も可能です。
デジタルで何か新しいことを始めたい。でも。何からどう始めたらいいのかわからない。そういったお悩みをお持ちの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。
■プロフィール
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株式会社ADDIX 執行役員 久保倉 淳(くぼくら じゅん)大学卒業後入社した総合広告会社にて、国内自動車の社内ベンチャー事業、旅行代理店のダイレクトマーケティング事業、企業・団体の周年事業、球場や駅などの公共空間リニューアル事業など、企業の事業開発案件に多く携わる。2017年にADDIXに参画。デジタルプロデュース事業部事業開発ユニットの執行役員として、様々な企業の事業開発をビジネスモデルデザイナーとして支援中。 |
※本記事内の情報や部署名・所属等は記事公開時点のものです。