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デジタルで変わる趣味領域の今とこれから

Posted by ADDIX on Jan 13, 2021 3:09:00 PM

ピークス株式会社(現:株式会社ADDIX)によるウェブセミナー「デジタル専門誌 flick!編集長と、IoT先駆者 Shiftall岩佐CEOが語りつくす!〜デジタルで変わる趣味領域の今とこれから〜」を、2020年11月25日に開催しました。

昨今、デジタル分野のモノづくりは活発化し、個人規模でも作りたいモノを作れる時代になりました。そして、それは身近なライフスタイル領域を越え、趣味領域にも派生しています。

こうしたデジタルの進化は、趣味の世界にどんな影響を与え、今後どこに向かっていくのでしょうか? “デジタル”と“趣味”に熱狂し続ける二人の対談をレポートします。

※本記事内の情報、部署名・所属等は2021年1月13日現在のものです。

  

 

1. 「趣味」の世界を激変させたデジタルという存在

(1)すべてはiPhoneから始まった

バイク、ラジコン、熱帯魚、ガジェット……など、趣味人生を謳歌し続けてきたタクタにとって「趣味は感性!」であり、それゆえ、かつては「趣味は感性の世界だからデジタルでは表現できない」とさえ思っていたそうです。ところが、ある衝撃がタクタの意識を劇的に変えました。

そう、みなさんもご存知の「iPhone」です。2007年に登場したエポックメイキングなこのデジタルデバイスは、「個人がいつでもどこでもインターネットに接続できる」という世界を実現しました。このことが、マイナーな趣味の世界をインターネットに近づけます。

 

(2)IoTとMAKERムーブメント




続いてIoT(Internet of Things)デバイスの登場により、少数、1台からでも自作・試作できるようになりました。

どういうことかというと、Arduinoのような安価な1ボードマイコンに、自分でプログラミングして、実行できるようになったのです。

 

たとえば熱帯魚の場合、水槽の温度をセンサーで検知しiPhoneに取り込み、状況に応じてモーターを作動させて……というデジタルガジェットを、Arduinoを使うことで、大企業ではない個人が作れるようになったのです。これを「MAKER ムーブメント」といい、まさに誰もが簡単にモノづくりできる時代を迎えました。

 

(3)誰もがデバイスを作れる時代の到来



「個人が作れる」ということは、「おもしろいから作ってみよう」という感性や思いつきを、「低コスト・小ロットで作れる」ということです。デジタルによる高度なテクノロジーは、やがて趣味の世界でもどんどん活用されていくようになりました。通常の企業的観点からすれば製品化されないであろう条件下でも、ちょっとしたプロトタイプを簡単に作れるというメリットは、ニッチな趣味の世界においてむしろ追い風となったのです。

また、iPhoneが登場する以前は、何か欲しいものがあっても、どこで買えばいいのか、そもそもそんなものが存在するのかもわからない世界でした。しかし、いまは世界に数個しかないものでも簡単に検索できますし、どこにいても、すぐに購入できます。こうしたテクノロジーの進化や浸透は、趣味の世界から日常生活にまで深く入り込むようになりました。

 

2.「好きなものは好き」だから見えてくる可能性

(1)グローバルニッチは世界と闘える

 「1国でたった100個しか売れないものでも、100国なら10,000個売れる」というのは、岩佐氏がかつて掲げていたグローバルニッチという考え方です。IoT家電の開発・販売を行っていた株式会社Cerevoで岩佐氏は、実際に30種以上のIoT製品を70以上の国と地域に届けていました。

ところが、いまデジタル最前線にいる岩佐氏も、そのルーツは「こんなモノがあったらおもしろい。じゃあ自分で作ってみよう」という、まさに趣味人と同じ感性にあったと言います。「スマホで操作する改造ミニ四駆製作キット」もそんな感性から生まれたプロダクトです。ターゲットは極めてニッチですが、いまでは学校の教材として多くの教育機関に採用されるまでに成長しているのだとか。

ほかにも実際に販売されているプロダクトを多数紹介してくれた岩佐氏。タクタも驚くニッチ極まりないものもありましたが、「結局、好きなものは好き。感性に訴えることができれば売れますよ」と、根本的には感性が大事であると説いている岩佐氏の姿が印象的でした。

ちなみに、岩佐氏は熱狂的なクルマ好きとのこと。家では何台かの愛車のメンテナンス・チューニングと、自作したコントローラー付きのゲームチェアで、深夜に仲間とVRオンラインカーゲームを楽しむなどという一面もあるそうです。

 

(2)VRやARはもはやオタクのものではない



いま岩佐氏が注目しているVRについても語ってくれました。「ちょっとオタクっぽい印象がありますが、実際にやってみると、ビデオ会議よりもずっと人と会っている感覚があるのでおすすめ」と言うタクタに対し、「VRはたしかに急成長していますが、とはいえ、まだしばらくは現実世界と並走していくと思いますね」と言う岩佐氏。

 

岩佐氏の「Twitterで匿名アカウントを使うように、VRではリアルとは違う自分(別人格)を形成する傾向が強く、あえて切り離すことで自分の世界を広げようとしているのではないか」という説はユニークでした。事実、若い人のなかにはVR体験が癒しになっているという声もあるようです。これも、ある意味で個々人の「好き」や「感性」をデジタルが具現化した、新しいかたちのひとつといえるでしょう。

 

3.パネルトーク~岩佐氏とタクタの生Q&A~

対談の後半は、事前に用意した質問や、リアルタイムで投げかけられた質問に二人が答えてくれました。コロナ禍によってどんな影響が起こっているか、予想外に伸びているモノ、岩佐氏がいま注目している可能性、趣味の世界における5Gへの期待など……デジタル最前線の二人だからこそ語れるリアルなトーク展開は見ものでした。(Q&A 一部抜粋)

 

Q. コロナ禍で業界全体がどう変わりましたか?

ハードウェア・ガジェット業界(モノを作る業界)について言うと、これまでやってきた業務については、ツール(オンライン会議など)によって効率化が進んでいる反面、国際的な輸出入が多い分野なので売上ではダメージがあります。また、製品開発過程でのコミュニケーションが難しくなっているので、そういう意味でも大変になりました。国内生産回帰という流れも起こっていますが、海外生産のほうがフレキシブルかつ低コストなので、おそらく長くは続かないでしょう。

一方で、業界内では朽ちていくと思われていたもの、たとえばウェブカメラやデスクトップPCが再加熱している現象も起こっていて、注目しています。広義のオンラインイベントという見方では、VRやVRを取り巻くハードウェアもこれからどんどん盛り上がっていくと思います。調理家電も伸びていて、Shiftallもリソースを強化しています。(岩佐氏)

 

Q. 5Gで可能になるこれまでにない体験は、趣味領域で具体的にどんなものがありますか?

 5Gだから、ということはそれほどないでしょう。5Gによって流行ったものは「5Gだから」になるのかもしれませんが、それはその時代になったから来たものにすぎません。3Gから4Gになったときも、ケーブル回線から光回線になったときも、劇的に変わったものはありませんでしたから。たとえどんなにデータ量が増えても、コアのインフラが整わない限りは、すべての人に無制限のスピードを供給することはできません。(岩佐氏)

 

Q. デジタル化したくないものは何ですか?

 ありません。(タクタ、岩佐氏)

どんなモノでも、デジタル化するとおもしろくなると思うんです。ただ、たとえばクルマの場合「マニュアルトランスミッションがなくなったら寂しい」という話はあるでしょうし、それは理解できます。ですが、それとデジタル化は別問題なのかなと。釣りでいえば、魚群探知機はデジタル化するし、したほうがいいはずだけど、自動で魚を釣ってくれますとなったら、スーパーに行けばいいという話になってしまいますよね。ですから、周辺はある一定までデジタル化していくはずだけど、デジタル化しないコア(アナログ)の部分は同時に残り続けるでしょう。どれほどデジタル化が進んでもユーザーに選択肢は残り続けるし、選択肢が増えることによって生まれる新しい世界はきっといいものになると思います。(岩佐氏)

どんなモノでもデジタル化するとおもしろいです。たとえば愛情みたいなものだって、デジタル化してダメということはありません。お葬式でも、従来のスタイルに加え、映像で生前の生活を見せるとか、VRで故人に会った感じがするとか、故人・遺族の意向に寄り添いつつ心により訴えるお葬式ができるかもしれませんよね。(タクタ)
 
デジタルと感性の両方を知っているからこそ導かれる答え、これが今回の対談でもっとも大事なメッセージなのかもしれません。

 

最後に

13年前、デバイスとIoTの登場により変わり始めた趣味の世界。デジタルはいまなお進化し続けていますが、感性は過去も未来もずっと変わることなく、趣味を楽しむすべての人のなかにあり続けます。だからこそ、タクタと岩佐氏は「デジタルは趣味をもっと、加速度的におもしろくさせる」と確信しているのでしょう。

一人ひとりの“好き”を応援するピークス(現:ADDIX)は、今後も趣味に関するさまざまな企画やマーケティング事例などといったウェブセミナーを行ってまいります。

 

■登壇者プロフィール

村上 タクタ
『flick!』編集長

1969年、京都府生まれ。’92年、枻出版社(当時は株式会社ライダースクラブ)に入社以来、バイク雑誌『RIDERS CLUB』やラジコン飛行機雑誌『RC AIR WORLD』、海水魚とサンゴの飼育雑誌『コーラルフィッシュ』など、29年間で600冊以上の趣味誌を作る。現在は、デジタル領域のメディア『flick!』編集長として、紙、電子書籍、ウェブの領域で発信。Apple本国での発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスの1人でもある。

岩佐 琢磨
株式会社Shiftall CEO

1978年生まれ、立命館大学大学院理工学研究科修了。パナソニックにて商品企画に従事した後、ネットワーク接続型家電の開発・販売を行う株式会社Cerevoを立ち上げ、30種を超える自社開発IoT製品を世界に届けた。2018年からは、ハードウェアの開発・製造・販売を行う株式会社Shiftallを設立し、代表取締役CEOに就任。冷蔵と温めを行える調理家電「Cook’Keep」、人前で同じ服を着ることを防いでくれるスマートミラー「Project: NeSSA」、ARプロジェクション機能付き照明「BeamAR」を発表。


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