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【後編】ライフスタイル・ローカルデザインのススメ(観光事業者の課題とキーワード・パネルトーク編)

Posted by ADDIX on Oct 16, 2020 5:24:00 PM

ウェブセミナー「ライフスタイル・ローカルデザインのススメ 〜暮らし方から考える、地域ブランディング事例〜」を、2020年9月9日に開催しました。

働き方改革やコロナ禍による生活様式の変化により、“本当に豊かな暮らし”とは何かを再考する方が増加している中、地域ではどのような取り組みを行えば良いのか模索している自治体も多いのではないのでしょうか。

後編では、アソビュー株式会社 内田氏によるゲストトーク「Withコロナにおける地域の観光事業者の課題とキーワード」とQ&Aをダイジェストとしてレポートします。

前編はこちら|ライフスタイル・ローカルデザインのススメ(宮崎県日向市・北海道上川町のブランディング事例)

 

※本記事内の情報、部署名・所属等は2020年10月16日現在のものです。

  

 

1. ゲストトーク(アソビュー株式会社 観光戦略部 内田有映氏)
Withコロナにおける地域の観光事業者の課題とキーワード

アソビュー株式会社の内田氏が登壇し、はじめに「アソビュー!」を説明しました。「『アソビュー!』とは、インターネットを通じて、体験やレジャー施設とお出かけしたい人を繋ぐプラットフォームです。

掲載ジャンルは450に及び、グランピングやラフティング等のアウトドアから、陶芸教室等のインドア、水族館(国内の7割をカバー)や遊園地、さらに、キャッシュレス推進の取り組みもあり、国立公園や城跡の掲載も増えています」

内田氏は「事業者の皆様にとっては、アソビュー!を利用することでデータが取れることを特に重宝頂いています」と述べました。

 

(1)コロナ禍におけるアソビューが直面した課題と取り組み



アソビューのサービスはお出かけが軸になっているため、コロナの影響を強く受け、体験予約数が前年比約95%減であると報告。例年150%〜200%で成長していたアソビューですが、この厳しい状況下でどのような取り組みをしたのでしょうか。

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一つ目は、オンライン体験です。「似顔絵職人さんの会社では、遠距離の人たちの似顔絵をオンラインで描き、ご自宅に送る」等の工夫をして体験を創出。体験事業者は、オンラインでどのようなコンテンツを作るか、楽しさをどう伝えるか試行錯誤しながら開発していたそうです。


二つ目は、おうちでできる体験キットを開発し、『アソビュー!ストア』という体験キット専門サイトで販売する取り組みです。その他にも「四国水族館が応援チケット(1人分の年間パスポート+1人無料入場+イベント招待)を販売し、22,000円のチケット2,000枚が1週間で売り切れた事例もあります」と紹介しました。

内田氏は「地域の事業者様が生き残らないと、アソビューのサービスも運営できません。自治体様と組んで、GoToトラベルキャンペーンの地域版のような取り組みも積極的に実施しました」と語りました。

また、コロナがいつ収束するのか分からない中、感染対策を気にする人も多いため、疫学専門家と共同で作成したガイドライン、チェックシート、教育ビデオ等で事業者と連携。「お客様がコロナ対策をしている事業者様を選べる仕組みにすることで安心感を醸成し、万が一対策できていないという声が届く場合には、アソビューが確認するフローにしています」と感染対策について言及しました。

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(2)Withコロナにおける観光事業者のキーワード9つ

下記9つのキーワードを意識することで、Withコロナでも地域を知ってもらう・好きになってもらう・来てもらう工夫ができることを説明しました。

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Q&A

Q1 地域づくりは、まず何から行えば良いですか?

>北海道 上川町 三谷氏
一番最初に決めたのは、コンセプトです。上川では「大雪山を中心とした地域活性化」を第一に据えているので、進めていく中で「あれ、これは何のためにやっているんだっけ? どうしたら良いんだっけ?」と迷った場合でも、コンセプトに立ち返ることで軸をブラさずにいられます。

>宮崎県 日向市 東村氏
行政が旗振りして計画を作るだけでは、もう厳しくなってきていると感じています。日向市では、サーファーたちのライフスタイルを後押しするような形だったので、住民の活動や動きをしっかり把握して、それをサポートできるような取り組みを探していくというのも良いと思います。

>アソビュー 内田氏
コロナになってから、現状把握が重要だったと思っています。行政の方々は自分たちでビジネスをするわけではないので、「体験事業者はどれぐらいの被害があるのか?」「売上はどのくらい下がっているのか?」などアソビューで調査を行い、そのレポートを各行政にお渡ししていました。

 

Q2 行政の取り組みに対する住民の理解は難しいと思いますが、どのようにされていますか?

>北海道 上川町 三谷氏
住民の理解は一番難しい部分ですが……町には絶対キーパーソンがいるので、その方をいかにうまく巻き込むかが大切です。観光のキーパーソン、農業のキーパーソンなど分野ごとのキーパーソンたちを中心に、その分野をまとめていくなど、地域住民を巻き込むやり方も良いのでは、と思っています。

>宮崎県 日向市 東村氏
昔は一般的にサーフィンに今ほど良いイメージがなかったこともあり、必然的にさまざまなご意見ももちろん頂戴していますが、現状サーフィンという軸をブラさず貫いている状況です。国際大会等を見せることで分かり合える部分はあると思うので、そういった動きを強化していけたらと思います。

>アソビュー 内田氏
キーパーソンというのはおっしゃる通りで、30代くらいの地域の若者など、今後地域を担っていくであろう方々と積極的に仲良くなって、共感してもらうということを意識していますね。

>モデレーター 北原
地域ブランディングを進めるということは、結局人が動かしているんだなと感じますが、いかがでしょうか?

>アソビュー 内田氏
そうですね。特に「体験」では、お土産などの物販と違って、「人」が商品の一つなので、人がいないとできません。例えば海が綺麗だからダイビング体験を提供したいとした際に、誰が教えるのか? ということが起こり得ます。そういう意味では、地域の人に動いてもらえる状態をどう作るかが重要です。人をいかに巻き込むかがやはりポイントだと思っています。

 

Q3 上川町のキャンプ場大規模改修の予算はどのように捻出されるのでしょうか? 民間とのシェアなど工夫されているポイントがあれば教えてください。


>北海道 上川町 三谷氏
基本的に上川町の資金は、地方創生推進交付金を上手く活用しています。もちろん地域にDMO(観光地域づくり法人)もあるので、一緒に補助金を活用して予算を捻出しています。民間からお金を頂くことはしていないです。

>モデレーター 北原
民間とのシェアはないとのことですが、上川町の先進的な取り組みとして、色々な企業とのコラボレーションがあると思います。今は、どのようなコラボレーションを進めているのでしょうか?

>北海道 上川町 三谷氏
マイナビさんや、アウトドアメーカーのコロンビアさん、マウスタッシュさん、スノーピークさんと協業しています。上川町における地域づくりでは民間企業とのコラボレーションを続けていきたいと考えています。今後もメーカーさんを中心にビジネスマッチをして、一緒に地域活性化していこうと思っています。

>モデレーター 北原
企業とコラボレーションをして良かった点はありますか?

>北海道 上川町 三谷氏
観光施設のスタッフウェアをアウトドアメーカーさんに協賛してもらうなどして、地域の人たちに還元できた点です。メーカーさんはPRになり、地域からすると負担が減るので、目に見える形で良かったです。

 

最後に

>アソビュー 内田氏
アソビューではコロナの影響を受けているからこそ、コロナがいつ終わるのかを考えるのはやめよう! と話しています。今ある中で何ができるかを考えるよう意識して、この業界で生き抜くためのやり方を模索していければと考えています。

>北海道 上川町 三谷氏
地域住民の理解については、どの地域も共通で抱えていると思います。何も意見が無いというよりは、反対意見にも注目して上手く取り込むなど挑戦しながら、引き続き地域づくりに取り組みたいと思いました。

>宮崎県 日向市 東村氏
反対意見もありますが、そこをどう説得するかを楽しむぐらいの熱量で取り組みたいです。そのためには現場を知ることや、コンセプトやゴールを決めることも必要になりますが、頑張っていければと思います。今回は非常に勉強になり、ありがとうございました。

>モデレーター 枻出版社 北原
本日の登壇者の皆さんは、非常に前向きだと感じました。コロナ禍で大変な状況ではありますが、前を向いていけば活路は見出せるのではと思っています。ありがとうございました。

 


■登壇者プロフィール

内田 有映
アソビュー株式会社 観光戦略部部長 兼 アソビュー総研所長

神奈川県小田原市出身。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
新卒で博報堂ブランドコンサルティング(現・博報堂コンサルティング)に入社。ベンチャー創業への参画を経て、その後アソビュー株式会社に入社。
観光戦略部の責任者として、官公庁・地方自治体向けの事業を統括。観光や体験領域におけるコンサルティング業務、ワークショップの企画運営など幅広く従事。また地域観光の専門領域の知見を活かし、Forbes JAPANなどメディアへの執筆活動や、NewsPicksのプロピッカーとしても活動している。

東村 光教
宮崎県日向市 観光交流課 サーフタウン交流推進係長

1996年 東郷町役場入庁。
2006年 日向市と東郷町の合併により日向市職員となり、2020年4月より現職。
2016年12月から展開しているサーフタウン構想「リラックス・サーフタウン日向プロジェクト」を推進すべく、市民・地元サーファー・行政の取りまとめ役を担いながら、プロジェクトの企画・運営を行っている。

三谷 航平
北海道上川町役場産業経済課 移住定住グループ
株式会社枻出版社 イベントユニット ディレクター

2012年 上川町役場入庁後、北海道ガーデンショー(2015年)・大雪山大学(2017年~)・KAMIKAWORKプロジェクト・上川町版DMO「大雪山ツアーズ」設立(2018年~)など地域をブランディングするプロジェクトに構想段階から数多く携わる。

 

モデレーター 北原 淳
株式会社枻出版社 イベントユニット シニアコンテンツプロデューサー
SketchBook,Inc. COO

順天堂大学大学院でスポーツマーケティングを専攻。修士号を取得後、1999年より日本プロサーフィン連盟や旧・世界プロサーフィン連盟日本支局(現・WSL ASIA)で国際大会を含む、各種サーフィンコンテストやビーチイベントをプロデュースする。
2006年、枻出版社に入社。雑誌から派生するコンテンツやネットワークを活用したイベントやプロモーション企画をプロデュースしている。また、海や山といった大自然を地域ブランディングのコンテンツに据えた地方創生の企画提案も数多く手掛けている。


Topics: 自治体事例, メディアIP事業