昨年8月、アルコール依存症の人々を支援するフランスのAddict Aide基金が、Instagramを活用したユーザーを驚かせるキャンペーンを展開しました。合計50万シェア、10億インプレッションを獲得し、フランスでは大きな話題となりました。
スタイリッシュなInstagramアカウントには秘められたメッセージが…。
キャンペーンは、2016年8月1日に「ルイーズ」という名の25歳のパリジェンヌが、インスタグラムのアカウントをスタートした所から始まります。
美しくスタイリッシュなルイーズは、アカウント開設以来たった2ヶ月で1万2000フォロワー、合計5万「いいね!」を獲得。投稿の内容は、友人とのパーティーやディナー、ブルターニュやベルリンでのバカンスの様子などで、誰もががうらやむような、パリジェンヌが人生を謳歌している写真が並びます。
みるみる内に人気になったルイーズの投稿には、フォロワーたちからも「Cool!」「I love it!」など、ポジティブな内容のコメントが多く寄せられます。
このように、夏を満喫するルイーズのInstagramアカウントは盛り上がっていきますが、しかし、彼女の投稿をよく見てみると、ある共通点があることに気がつく人もいるでしょう。投稿写真にはほぼ必ずアルコールが写り込んでいるのです。
フォロワーたちも気がつかなかった彼女のアルコール依存症
8月1日のアカウント開設から約2ヶ月後の9月20日、とうとうネタバレの時がやってきます。
実はこのアカウントは、Addict Aide基金のアルコール依存症防止キャンペーンのために作られたもので、最後に真実を告げるキャンペーン動画が投稿されました。動画は、ルイーズの今までの投稿写真を取り上げながら、最後は「身近な人の依存症は見落としがち。」というメッセージで締めくくられます。
言われないとなかなか気がつきませんが、ルイーズはアルコール依存症だったのです。彼女の各投稿には何百もの「いいね!」がされていても、彼女の危機に気がつく人は少なく、最後にフォロワーたちを驚かせることによって、このキャンペーンの目的が達成されました。
Instagramの特徴を良くも悪くも最大限に生かしたキャンペーン
このキャンペーンには多くの反響が寄せられ、カンヌ広告祭にも出品されました。SNSという日常的・習慣的に目に触れるメディアを使用することで、身近な人の危機に気がつきにくいという事実を見事に気がつかせる企画でした。
また、VOGUE紙はこのキャンペーンに対して「a warning sign for Instagram users(Instagramユーザーへの警告だ)」とコメントしています。Instagramの虚偽的な特徴も浮き彫りにする施策となりましたが、そのような特徴こそが企画の重要な要素でした。プラットフォームの特性を見事に生かしきった、成功例と言えるでしょう。
■ルイーズのInstagramアカウント:
https://www.instagram.com/louise.delage/
■Addict Aide 公式サイト:
https://www.addictaide.fr/
※本記事掲載の情報や所属、役職などは記事公開時点のものです。